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ヤグルマギク

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以前の記事にも書いたことがありますが、ドイツの国花はヤグルマギクです。矢車菊、日本では5月の端午の節句に飾る鯉のぼりの竿の一番上についている矢羽根でできた車輪「矢車」に見立てて付けられた名前だそうですが、ドイツではKornblume(コルンブルーメ)と呼ばれます。Kornblumeは英語のcornflower(コーンフラワー)と同じ意味で、麦の花、麦畑の中によく咲く花なので、そういう名前が付いてます。ヤグルマギクは日本では園芸種で観賞用として栽培される植物だそうですが、ヨーロッパでは麦畑や草原に自生します。麦畑に繁茂するヤグルマギクはヒナゲシと同じく農作業にとっては厄介物の雑草扱いをされてるそうです。

目の覚めるような青色のヤグルマギクは地中海沿岸から西アジアにかけての地域が原産で、日本には江戸時代末期にやってきたそうですね。農業では雑草の扱いを受けているヤグルマギクも、古代エジプトのツタンカーメン王の墓の棺にはヤグルマギク、蓮、オリーブ等で作られた花輪が載せられていたそうですし、古代では青い花が魔除けとされ、王様の胸のところに飾られていた由緒ある花だったそうです。 ちなみにマリー・アントワネットが好んだ花で、洋食器の小花散らしの模様は彼女がデザインしたヤグルマギクの柄に由来するのだそうです。ドイツの初期ロマン主義の中心人物である詩人であり小説家でもあったノヴァーリスの代表作である「青い花」、 内容は、詩人が夢の中で見た青い花に恋い焦がれ、その面影を求めて各地を遍歴し、その途上で様々な人に会って成長していく過程をリリカルに描いたものだそうですが、その象徴的な青い花というのはヤグルマギクではないかと言われてます。

ヤグルマギクには更には薬効があります。アントシアニンという主成分が含まれ、眼精疲労や目や体の老化を防止する作用があり、他にも 抗炎症作用、利尿作用、消化促進作用、収斂作用、抗菌作用があるのだそうです。

さて古代から色んな意味が込められたヤグルマギクが、なぜドイツの国花になったのかという由来には、下記のような出来事があったそうです。時は19世紀の始め。ドイツのプロイセンがナポレオンの侵攻にあった時に王妃ルイーゼは首都のベルリンから逃れ、身を隠す為に王子たちと共に麦畑に入って行ったそうです。麦畑の中で身を隠しながら、子供たちを慰める為にそこに咲いていたヤグルマギクで花冠を作ってあげたのだそうですが、その体験が王子の一人で後に初代の皇帝となったヴィルヘルム1世の心に忘れられない大切な思い出として残っていたのでしょう。彼が皇帝になった時に、皇帝の紋章としてヤグルマギクが使われたのでした。その後ドイツの国花として引き継がれたようです。幼い頃の思い出の野の花を紋章にしようと思ったなんで、老いた頃のヴィルヘルム1世の肖像を見ると、もみあげとカイゼル髭が立派な厳格そうな風貌なのですが、内面は繊細で純情な人だったのかもしれませんね。ウィキにヴィルヘルム1世の人物像が書かれてましたが、それを読むと合点がいくような気がします。
by sternenlied | 2016-08-06 00:49 | 季節の花

木陰のアムゼル2号庵にようこそ。ドイツで暮らしています。散歩と旅が大好き。琴線に触れたもの達をここに拾い集めていきたいと思います。そして目に留まった日常のさりげない一コマも。


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